『週刊アサヒ芸能』1964年12月〜1965年8月連載 文政時代のどこか(1818〜1830年)と慶長5〜7年(1600〜1602年) 隠密、鶉平太郎は忍者だが、文政の時代にその能力を存分に発揮できる場がなく、戦国の世に生まれたかったと嘆いていた。ある時、忍法「黄泉がえりの印」で服部半蔵を復活させると、服部半蔵は戦国時代に平太郎を連れて行くと云い出した。平太郎は200年前の慶長5年にタイムスリップし、戦国時代の忍びとなる。 表の顔は、お小人。裏の顔は、大呉服店大丸屋に出入りする公儀隠密。 死者を甦らせる。 初代服部半蔵。伊賀甲賀の忍者二百人を従え、徳川家康に仕えた忍者の総帥。鶉平太郎の忍法「黄泉がえりの印」で生き返る。 お徒目付組頭。鶉平太郎の上司。 織田十兵衛の娘。鶉平太郎の恋人。 番町の三百石の旗本。 明智治部の息子。お千と婚約する。 豊臣家の家臣。 真田幸村の家来。 真田幸村の家来。 真田幸村の家来。 真田幸村の家来。 真田幸村の家来。 伊賀鍔隠れ谷の忍者の頭領。 伊賀鍔隠れ谷の忍者。 並んで走る二人の右肩と左肩にもう一人が後ろ向きに立ち、上に乗った人間が手裏剣を投げながら逃げる。 女性の陰毛をつないだものを振り、十間先のものを切断する。 伊賀鍔隠れ谷の忍者。 伊賀鍔隠れ谷の忍者。 伊賀鍔隠れ谷の忍者。 鼻、口、指、尻の穴、肺、腸、骨から雅楽のような音を出す。 伊賀鍔隠れ谷の忍者。逐電し、明智光秀のもとにいる。 伊賀鍔隠れ谷の忍者。 伊賀鍔隠れ谷のくノ一。 乳を出すと男が集まってきて、勃起が収まらなくなり、その後、乳から放出した白い糸で男根を縛りあげ、男たちを連れ従える。 伊賀鍔隠れ谷のくノ一。 体を液体化し、触れた者を動けなくする。 伊賀鍔隠れ谷のくノ一。石川五右衛門と駆け落ち、明智光秀のもとにいる。 大阪城を拠点とする大名。 豊臣秀吉の御台。 お市の妹。淋病もち。 お市の妹。外見がお千に似ている。 豊臣家の知将。西軍の総司令官。徳川家康を倒し、豊臣家に反旗を翻す。 石田三成の謀将。 豊臣家家臣。 豊臣家家臣。 豊臣家家臣。 幼名、吉法師。お市の草履取から大名になる。 豊臣家に出入りする伴天連。 宇留岸に従う修道士。 関東を拠点とする大名。豊臣秀吉と対立。 本作は文政時代の忍者が200年前の戦国時代にタイムスリップし、史実と異なる歴史が展開していく異色作である。その特異さゆえか、駄作という扱いを受けることが多いようであるが、私は特別な違和感も覚えず、自然に受け入れられた。仮に忍法帖シリーズが全部で10作品しかなく、その中の一編がコレだということであれば、ちょっとがっかりしたかもしれない。だが、100作品を超える作品がある中には、このような変化球がいくつかあったほうが面白いと思うのだ。短編の中には喜劇も多く、それらに触れていると、このノリもいつもながらの忍法帖なのである。「魔界転生」と同時期に書かれていたという事実には、あまりの方向性の違いに驚くが、山田風太郎の非凡さを現わすエピソードとも云える。
初出
時代
主な出来事
あらすじ
登場人物(文政時代)
鶉 平太郎(うずら へいたろう)
忍法:黄泉がえりの印(こうせんがえりのいん)
服部 半蔵 正成(はっとり はんぞう まさなり)
織田 十兵衛(おだ じゅうべえ)
お千(おせん)
明智 治部(あけち じぶ)
明智 藤吉郎(あけち とうきちろう)
登場人物(慶長時代 - 真田家)
真田 左衛門佐 幸村(さなだ さえもんのすけ ゆきむら)
猿飛 佐助(さるとび さすけ)
霧隠 才蔵(きりがくれ さいぞう)
穴山 道八(あなやま どうはち)
海野 金助(うんの きんすけ)
筧 源太(かけい げんた)
登場人物(慶長時代 - 伊賀鍔隠れ谷の忍者)
百地 丹波守(ももち たんばのかみ)
御牧 道雪(みまき どうせつ)
忍法:逆櫓(さかさやぐら)
忍法:髯切り(ひげきり)
八潮 円十郎(やしお えんじゅうろう)
長門 銅銭(ながと どうせん)
那河 銀八(なか ぎんぱち)
忍法:肉雅楽(にくががく)
石川 五右衛門(いしかわ ごえもん)
葛西 軍兵衛(かさい ぐんべえ)
お箙(おふく)
忍法:男曳き(おとこびき)
お大(おだい)
忍法:虫とり草(むしとりぐさ)
お巻(おまき)
登場人物(慶長時代 - 豊臣家)
豊臣 秀吉(とよとみ ひでよし)
お市(おいち)
おちゃちゃ(おちゃちゃ)
千姫(せんひめ)
石田 治部少輔 三成(いしだ じぶしょうゆう みつなり)
島 左近 勝猛(しま さこん かつたけ)
明智 日向守 光秀(あけち ひゅうがのかみ みつひで)
加藤 主計頭 清正(かとう かずえのかみ きよまさ)
福島 左衛門太夫 正則(ふくしま さえもんだゆう まさのり)
織田 上総介 信長(おだ かずさのすけ のぶなが)
宇留岸(うるがん)
沙丹(さたん)
登場人物(慶長時代 - 徳川家)
徳川 家康(とくがわ いえやす)
感想
また、さらにすごいのは荒唐無稽ながらも、忍法帖シリーズに一貫するあるルールをオチによって守っていることである。そのオチには触れないでおくが、普通はこれをやると幻滅されることが多い禁じ手であろう。ところが、忍法帖シリーズのルールを守るために、このような構成になっていると考えると、非常に美しいエンディングである。最初に読むのはお勧めしないが、いくつかのシリーズに触れたことのある中級者以上の方にぜひとも読んでほしい作品だ。関連作品
原作本。
忍法死のうは一定(忍法関ヶ原)
「オール讀物」1970年7月号 天正10年(1582年) 本能寺の変で追い詰められた織田信長の前に突如現れた幻術士、果心居士。居士は幻法「女陰往生」で逃げ延びるよう提案する。「女陰往生」とは、交合し、女体内に溶け入り、再び生まれ変わる幻術である。常人は生まれ変わる際に見る同じ人生に耐えきれず、廃人となってしまうが、信長ならばもとの信長のまま再誕できるだろうと居士は云うのだった。 幻術士。 交合すると男が溶けて女体に入り、女陰の中で人生を反復し、死ぬまでの未来をも見て、記憶した状態で生まれ変わる。常人は同じ人生に耐えきれず、廃人になるか、白痴になるか、自殺する。 戦国大名。本能寺にいる。 織田家家臣。謀反を起こす。 織田家家臣。備中にいる。 織田家小姓。 足利幕府15代将軍。寵姫と交合中に女陰往生する。 戦国大名。生涯不犯のはずだったが、女陰往生する。 南蛮人の伴天連。 日本人の伴天連。 堺の豪商、納屋衆の長老。 「伊賀忍法帖」で強烈な印象を残した幻術士、果心居士が再び登場する。果心居士は実在したか定かではないが、史料に名の残っている人物で、忍法帖シリーズの他の作品にもたびたび顔を見せる。服部半蔵と並んで登場回数が多く、準レギュラーとも云える存在だ。居士の使う幻術は忍法帖シリーズの世界観と相性がよく、本当にいたかもしれない人物の活躍には胸が踊る。本作はその果心居士が本能寺に現れ、織田信長を幻術で謀反から生き延びさせようとする物語である。
初出
時代
主な出来事
あらすじ
登場人物
果心 居士(かしん こじ)
幻法:女陰往生(にょいんおうじょう)
織田 信長(おだ のぶなが)
ちゃちゃ(ちゃちゃ)
明智 光秀(あけち みつひで)
羽柴 秀吉(はしば ひでよし)
森 蘭丸(もり らんまる)
松永 弾正 久秀(まつなが だんじょう ひさひで)
武田 信玄(たけだ しんげん)
足利 義昭(あしかが よしあき)
上杉 謙信(うえすぎ けんしん)
カリオン(かりおん)
ロレンソ(ろれんそ)
千 宗易(せんの そうえき)
感想
短編ながら、描かれる信長像がクールで魅力的だ。冒頭、信長が外国と日本との違いについて南蛮人の神父に尋ね、海外進出を語る場面があるのだが、日本の悪習を素直に受け入れ、課題とし、前へ進んでいこうとする視座の広さに、いきなり信長のスケールの大きさが伝わってくる。
また、幻法「女陰往生」も無茶苦茶で面白い。交合し、女体の中に溶け入ると、今までの人生と、これから体験する未来までをも見て生まれ変わるというもので、常人はその衝撃に耐えきれず、廃人になるか、白痴になるか、自殺してしまうという過酷な術である。本編では武田信玄、足利義昭、上杉謙信が「女陰往生」により死んでいるが、信長ほどの男ならばどうなるのか。結末は伏せるが、本能寺の変以降の未来を見た信長は、仇を討った秀吉を褒めず、勝手な行動と咎め、激怒する。この場面のこの反応も信長らしく、痺れるところだ。山田風太郎作品で本格的に織田信長を題材としたものはなかった気がするが、忍法帖シリーズにたびたび登場するであろう織田信長に注目していきたい。関連作品
原作本。
忍法瞳録(忍法関ヶ原)
「別冊文藝春秋」1970年3月号(「盲忍」改題) 元和4年〜寛永13年(1618〜1636年) なし 徳川家へ侵入者があり、服部半蔵は証拠から、志摩藩、土鬼一党の仕業であることを調べ上げた。その中で「瞳録の術」という眼にうつったものを記録し、眼の持ち主が見たものを第三者が見ることができるという忍法の存在を確認。服部半蔵は部下の忍者、干潟甲兵衛に「瞳録の術」を探らせる。 服部組の忍者。 干潟甲兵衛の息子。 志摩藩、土鬼組の忍者。 土鬼春蔵の妻。 土鬼春蔵と千賀の子ども。 眼にうつったものを記録し、眼の持ち主が見たものを第三者に見せる。静止画だけでなく、動画も記録することができる。 徳川家家臣。服部組統領。 徳川家家臣。 徳川家家臣。 本作に登場する忍法「瞳録の術」は、眼にうつったものを記録し、第三者がそれを再生して見ることができるというユニークな術である。私は手塚治虫の「ブラック・ジャック」の「春一番」というエピソードを思い出した。角膜移植を受けた患者が、角膜提供者が見たことのある人物の姿が見えてしまうという話である。「眼の記憶」という点において、両者に共通する発想である。
初出
時代
主な出来事
あらすじ
登場人物
干潟 甲兵衛(ひがた こうべえ)
干潟 甲之介(ひがた こうのすけ)
土鬼 春蔵(とき しゅんぞう)
千賀(ちが)
千也(ちや)
忍法:瞳録の術(どうろくのじゅつ)
服部 半蔵(はっとり はんぞう)
本多 上野介(ほんだ こうずけのすけ)
土井 大炊頭(どい おおいのかみ)
感想
手塚治虫が山田風太郎を参考にしたとは思わないが、天才同士、考え方の似通うところがあるのではないだろうか。ふたりとも医師免許を持っている点も共通しており、もし対談などがあれば読んでみたかったところだ。二人とも好きな作家なので、互いにリスペクトし合っていたとしたら、こんなに嬉しいことはない。
物語にはまたしても服部半蔵が登場する。半蔵の部下の活動を本多上野介、土井大炊頭への報告書とすることで話が進んでいくのだが、この報告書形式が巧妙なところで、忍法「瞳録の術」にうつった映像と報告書の内容とが、実は食い違っており、というトリックが仕掛けられている。
忍法の設定と物語の構成がうまく噛み合った技巧派の一編である。発想の奇抜さだけでなく、ミステリ的構成にも唸らされる作品だ。関連作品
原作本。
忍法幻羅吊り(忍法関ヶ原)
「問題小説」1970年4月号 天明(1781-1789年)のどこか なし 天明の吉原、遊女たちの間で「月の恋占い」が流行っていたころ、傾成屋の赤蔦屋に小式部という遊女がやってきた。彼女は客はとらないが、客との遊びの場へは出て、ほかの女郎に対して性技の指導を行うなど、不思議な立ち位置で仕事をしていた。ある日、彼女は客の山吹屋万兵衛に以前、連れとして一緒だった武家五人をまた呼んでほしいとお願いする。 吉原、赤蔦屋の遊女。甲賀卍谷くノ一。 経血にひたして乾かした紙縒りを用意する。生理中にその紙縒りに火をつけ、厠に垂らし、男根を思い浮かべると、その男根が水面に浮かび上がる。紙縒りの輪でその男根を吊り上げると、持ち主の男性は女性に恋し、狂ってしまう。 吉原、赤蔦屋の遊女。 吉原、赤蔦屋の遊女。 吉原、赤蔦屋の遊女。 吉原、赤蔦屋の遊女。 吉原、赤蔦屋の遊女。 五条藩江戸御留守居役に奉公する武士。 五条藩江戸御留守居役に奉公する武士。 五条藩江戸御留守居役に奉公する武士。 五条藩江戸御留守居役に奉公する武士。 五条藩江戸御留守居役に奉公する武士。 札差し兼金貸し。 白粉屋の息子。 葛城藩藩士。 香取屋の娘。初狩杖馬の妻。 香具屋の娘。 お阿季の姉。 生駒藩剣法師範。 兄が雲見龍膳に殺害される。 葛城藩藩主。 老中。 田沼意次の息子。 本作は吉原を舞台に、遊女の間に流行ったと云われる「月の恋占い」をモチーフとした物語である。史実をそのままに描く忍法帖シリーズだけに、この「月の恋占い」も天明のころ本当に流行っていたのでは?と思い、調べてみたが、事実確認はできなかった。創作なのか、本当なのか。本当であってほしいが、創作だとしても「あったに違いない」と思わせる著者の筆致がまた素晴らしい。その「月の恋占い」を引用する。 まず長い長い紙縒りを縒る。これを遊女が自分の月経にひたして乾かす。そして深夜厠に入って用をすませたあと、その尖端に火をつけて、穴から垂らす。それは小さな赤い炎をあげつつ徐々に燃えのぼって来るそうである。すると、厠の暗い水面に──さまざまのものが浮かんだ模糊たる闇に、一つの男の顔が朦朧と照らし出されて来るという。つまり、夜ごとの万客のうち、自分にいちばん惚れている男の顔が。おたがいのらちもない手練手管の中に、真実の愛を求め、しかも厠以外に孤独の思いをこらす場所とてない遊女が縒り出した、これ以上はない哀しい占いといえるかも知れない。 この「男の顔」が「男根」に変わったのが忍法「幻羅吊り」である。厠に男根が浮かび上がり、紙縒りで男根を吊り上げる。そして、吊り上げられた男根の持ち主は狂う。想像してほしい。なんともいえない忍法ではないだろうか。この奇想天外な忍法を使った復讐劇が描かれていく。五人の男がそれぞれ因果応報な目にあっていく様は痛快だ。ストレートな勧善懲悪の物語の面白さも忍法帖シリーズの魅力のひとつと云えるだろう。
初出
時代
主な出来事
あらすじ
登場人物(赤蔦屋遊女)
小式部(こしきぶ)
忍法:幻羅吊り(げんらつり)
野分(のわき)
染衣(そめぎぬ)
雛菊(ひなぎく)
薄雪(うすゆき)
紅梅(こうばい)
登場人物(五条藩武士)
内船 金弥(うちふね きんや)
柿坂 達右衛門(かきさか たつえもん)
野ノ市 波伝(ののいち はでん)
塙 又八郎(たちばな またはちろう)
七塔寺 一骨(しちとうじ いっこつ)
登場人物(その他)
山吹屋 万兵衛(やまぶきや まんべえ)
津軽屋 千之助(つがるや せんのすけ)
初狩 杖馬(はつかり じょうま)
千羽(ちわ)
お阿季(おあき)
お索(おさく)
雲見 龍膳(くもみ りゅうぜん)
平作(へいさく)
葛城 豊肥守(かつらぎ ほうひのかみ)
田沼 意次(たぬま おきつぐ)
田沼 意知(たぬま おきとも)
感想
関連作品
原作本。
忍法ガラシヤの棺(忍法関ヶ原)
「別冊小説新潮」1970年7月号(「棺の伽羅奢」改題) 慶長5年(1600年) 豊臣秀吉亡き後、石田三成と徳川家康は対立。対決の日に備え、石田三成は諸大名の妻子を人質に大阪城へとりこもうとしていた。細川忠興夫人、細川ガラシヤも人質の対象となり、悩んでいたところへ、忍者、鴫留盃堂が現れる。 忍者。 一人の人間を善の人格持つ人間、悪の人格持つ人間の二人に分離する。 明智光秀の娘。細川忠興の正室。切支丹。関ヶ原の戦いにおいて、豊臣方の大阪城への人質を拒む。 丹後候。 細川家老臣。 伴天連。 関ヶ原の戦いの少し前、石田三成は諸大名が徳川方につかないようにするため、諸大名の妻子を大阪城へ人質として迎えようと計画した。細川忠興の妻、ガラシヤはこれを拒絶、切支丹は自死を禁じているため、家臣の小笠原少斎に自身の殺害を命じたという史実をベースとした話が本作である。
初出
時代
主な出来事
あらすじ
登場人物
鴫留 盃堂(しぎる はいどう)
忍法:陰陽分身(おんみょうぶんしん)
細川 ガラシヤ(ほそかわ がらしや)
細川 忠興(ほそかわ ただおき)
小笠原 少斎(おがさわら しょうさい)
ヴィンセンシオ(ゔぃんせんしお)
感想
宗教や自殺といった重いテーマを扱うシリアスな物語のはず。。が、ここに突如現れるふざけた名前の忍者、鴫留盃堂(しぎる はいどう)。一体どういうテンションで読み進めるべきなのか戸惑うが、ジキルとハイド、人間の善悪を主題にしていることを端的に表現しているだけで、話としては至って真面目だ。とはいえ、物語の内容よりも忍者の名前のほうが印象に残りそうではある。
この命名センスに「ハイスクール奇面組」のルーツは忍法帖シリーズ説を提唱したい。一堂 零(いちどう れい)、事代 作吾(じだい さくご)、色音 好(いろおと こう)、似蛭田 妖(にひるだ よう) 、怒裸権 榎道(どらごん えのみち)、エトセトラ。バトル漫画だけでなく、ギャグ漫画にも通用する普遍性を備えた忍法帖シリーズ。改めて、山田風太郎は奇才と云わざるをえない。関連作品
原作本。
忍法聖千姫(忍法関ヶ原)
「小説現代」1970年7月号 元和2年(1616年) 坂崎出羽守は大阪夏の陣で炎上する大阪城から千姫を救う。徳川家康は「救ったものに千姫をつかわす」と約束していたが、約束は果たされることはなく、坂崎家の家臣が千姫のもとへ直訴におもむく。 坂崎出羽守の家来。千姫のもとへ主の婚姻について直訴しに行く。 坂崎出羽守の家来。千姫のもとへ主の婚姻について直訴しに行く。 坂崎出羽守の家来。千姫のもとへ主の婚姻について直訴しに行く。 坂崎家家老。柳生宗矩にそそのかされて、坂崎出羽守を殺害する。 豊臣秀頼の妻。徳川秀忠の娘。徳川家康の孫。大阪夏の陣後、徳川家に迎えられる。 徳川家家臣。千姫の護衛に柳生家の剣士を派遣する。 柳生宗矩の甥。坂崎家三剣士に勝負を挑む。 服部半蔵の娘。柳生童馬と恋仲。 老婆に変身し、男を幻滅させる。 大阪夏の陣で千姫を救ったが「救ったものに千姫をつかわす」という徳川家康の約束を反故にされる坂崎出羽守。この人物は「くノ一忍法帖」にも全く同じシチュエーション、役まわりで登場し、そのなんともいたたまれない悲壮感に強烈な印象を残した。山田風太郎お気に入りの人物なのだろうか、本作、セルフリメイク作品として再登場。悲惨な宿命が再び訪れる。
初出
時代
主な出来事
あらすじ
登場人物
坂崎 出羽守(さかざき でわのかみ)
御馬 格兵衛(おんま かくべえ)
針ノ木 銅貫(はりのき どうかん)
小豆 玄七郎(あずき げんしちろう)
牧野 勘兵衛(まきの かんべえ)
千姫(せんひめ)
柳生 又右衛門 宗矩(やぎゅう またえもん むねのり)
柳生 童馬(やぎゅう どうま)
夕波(ゆうなみ)
忍法:女人幻滅(にょにんげんめつ)
感想
「くノ一忍法帖」の坂崎家の部下たちは千姫のもとへ訴え出るたびに暗殺されていた。本作も同様に坂崎家の家臣たちが千姫のもとへ訴え出るのだが、本作の千姫はいきなり自分の爪を差し出す。魔力的な力で魅せられ、爪を食べてしまう坂崎家家臣たちは、人外の力を得るとともに主家を裏切り、千姫の護衛を始める。さらに、千姫の唾、湯垢を飲むことで、更なる力を得ていき、そして、最後に食すものの衝撃たるや。千姫に「於千の屎(まり)をつかわそう」「食して、苦しゅうないぞえ」などと云わせてしまう山田風太郎はいい意味でどうかしている。面白いが、この尖り具合は確実に読む人を選ぶであろう。関連作品
原作本。
忍法小塚ッ原(忍法関ヶ原)
「オール讀物」1969年9月号 なし 処刑場、小塚ッ原の首切り役、鉈打天兵衛は人体を切断し再結合する忍法「人間接木の術」を使う伊賀者である。日々、死刑囚を見てきた彼は疑問に思う。斬った首を他人の胴につないだら、人格は首と胴のどちらに宿るのか?彼は弟子、香月天馬とともに死刑囚を使い、この題目の研究をはじめた。 小塚ッ原の首切り役。伊賀者。 男性の精汁と女性の愛液を混合した淫水を刀に塗り、人体を切断すると淫水の働きにより、再び接合することができる。 鉈打天兵衛の弟子。 薬種問屋。死刑囚。身首交換実験第一号。 御家人。死刑囚。身首交換実験第一号。 西国某藩士。死刑囚。身首交換実験第二号。 西国某藩浪人。死刑囚。身首交換実験第二号。 芦立蠟之介が密通した妻の夫の妹。 旗本。身首交換志願者。赤瀬源次郎の従兄弟。身首交換実験第三号。 如来寺隼人の妻。身首交換実験第三号。 旗本。如来寺隼人の従兄弟。身首交換実験第四号。 桑取半助の妻。身首交換志願者。身首交換実験第四号。 伝馬町の首切り役。 二人の人間の首を切断し、頭と体を入れ替えたらどうなるか?そんな奇抜な人体実験を描いた本作は、史実ものでも決闘ものでもなく、エログロもない、忍法帖シリーズの中でも異彩を放つ喜劇である。
初出
時代
主な出来事
あらすじ
登場人物
鉈打 天兵衛(なたうち てんべえ)
忍法:人間接木の術(にんげんつぎきのじゅつ)
香月 天馬(こうづき てんま)
叶屋 銀兵衛(かのうや ぎんべえ)
赤瀬 源次郎(あかせ げんじろう)
板津 玄心(いたつ げんしん)
芦立 蠟之介(あしたて ろうのすけ)
お左衣(おさえ)
如来寺 隼人(にょらいじ はやと)
お郁(おいく)
桑取 半助(くわとり はんすけ)
お秋(おあき)
山田 浅右衛門(やまだ あさえもん)
感想
忍法帖で喜劇というと、普段どおりの物語を展開しつつ、オチで落として笑いに収めるパターンが多かったと思う。が、本作は中盤から「身首交換実験」をやってのけており、すぐにおかしな話だと分かる。序盤のインパクトの強さゆえに、逆にオチがちょっと弱いような気もしてしまうが、過程が面白いので、まったく問題はない。
思えば、人体を切断し再結合する忍法は、シリーズ内でもたびたび登場してきた。それを異なる用途で笑いに変えてしまうとは、まさに天才の妙技。長編でやればくどくなりそうなところを、短編として軽妙にまとめている点も見事だ。
さらには、こんなくだらないことをしながらも「入れ替えを施した人間は頭と体のどちらに人格が宿るか?」つまり、人間とは何か?という永遠の問いに向き合っている点も面白い。司馬遼太郎の如く、小説中に作者として登場し、私見を述べる珍しい場面もあり、山田風太郎としても思い入れの強い作品なのかもしれない。短編の中でも傑作と位置付けられる一作ではないだろうか。関連作品
原作本。